傍にいてくれるあなただから。

いつでも。

いつまでも一緒にいたいと願う。

 

 

We are Partner

 

 

「アメル……!」

今にも泣き出しそうな、だのに喜びを孕んだ声が森に響いた。

「おかえり、おかえり、アメル……!」

泣きじゃくる背中を、同じく喜びの涙と共に抱き締めて白い天使が言葉を返す。

「ただいま……マグナ……!」

優しい風が、大樹の元に吹いていた。

穏やかな空の下。

天使の帰還を、少年とその兄弟子と、そして、彼らの兄姉二人が見つめていた。

 

 

「よかったよなーいやー実に良かった!!」

「ちょっとフォルテ、飲みすぎよ」

「これで飲まずにいつ飲むっていうんだよ、ケイナ。パッフェル、もう一杯!」

「はいはーい。ビール追加ですねー」

夜のゼラムの繁華街。

酒場のざわめきが辺りを満たすその場所で、フォルテとケイナは遅い夕食をとっていた。

戦いが終わり、アメルが帰ってくるのをひたすらに待っていたマグナたち。

久方ぶりに彼らの様子を見に行って――偶然、再会の場面に立ち会うことが出来たのだ。

そして大樹のある場所からゼラムに帰って来たのが、今と言うわけで。

「確かに、そうかもしれないけどね……」

フォルテの言葉に溜息をつきつつ、ケイナは夕食を楚々と進める。

反対にフォルテは喜びを食欲で表していると言わんばかりに食事をかっこんでいた。

「だろ?お前も飲むか?」

「結構よ」

「はいはい、ビールお待たせですー」

ざわめきをぬって、パッフェルがビールを運んでやって来る。

「今日は記念の日ですから、一杯プレゼントしちゃいますね」

「おおっ、やりい!」

「ちょっと……もう、明日つらくなってもしらないからね!」

警告を聞かないフォルテにまた一つ、溜息。

「でもよかったですよね」

ビールをテーブルに置いて、パッフェルが優しく微笑む。

「マグナたち、ずっとアメルさんのことを待ってたんですから」

彼女の言葉にケイナたちは動きを止める。

思い出すだけで、胸が切られるようなその想い出。

ただひたすらに待っていた。大切な人の帰りを。

それがいつになるかも分からぬままに。

「――すごく、嬉しいです」

「パッフェルさん……」

「わたしも、また遊びに行くとしましょう!あ、そういえば」

ぽん、と手を叩きパッフェルは意地悪げな笑みを浮かべると

「お二人はこれからどうするんです?」

とケイナとフォルテの顔を覗き込んで訊ねた。

「え!?」

「とりあえずはマグナたちの様子が心配でこのゼラムにいたんですよね?なら、これからはどうなさるんです?」

「そ、それは――」

ちらり、とケイナはフォルテに視線をやる。

フォルテもまた、先程の勢いを潜めてケイナにちらりと視線をやった。

訪れる沈黙。

「……まぁ、どうぞ。ごゆっくり〜」

笑顔で導火線に火がついた爆弾を投下して。

パッフェルは客に呼ばれて二人のテーブルから離れた。

「……」

「……」

ざわざわ、とざわめきが二人の間に割って入る。

視線をちらちらと合わせてはいたが言葉にならなくて。

「ねえ」

「なあ」

――言葉を発すれば発したで、ほぼ同時の発言で会話がかち合う。

慌てて「先にどうぞ」「いや、お前が先に」と言いあうが、やはり無言に戻ってしまう。

「…………これから、どうする?」

長い沈黙の後、最初に口を開いたのはケイナだった。

おずおずとフォルテに訊ねて夕食を口に運ぶ。

「どうするって、どうよ」

「いや、その――」

フォルテはビールをちびりとやって真剣な顔になる。

その眼差しにわずかに頬を染めてケイナは

「あんたは、どうするの?」

と小さな声で訊ねた。

「俺?」

ケイナの問いに、くっと笑ってフォルテはビールを飲みこむと

「そりゃあお前、お前の行くところに行くに決まってるだろ」

景気をつけるかのように、グラスをテーブルに叩きつけた。

「フォルテ……」

「俺たちはパートナーなんだぜ?行くところはいつも一緒、やることは一緒に決める。そうだろ?」

「――――」

フォルテの快活な言葉にケイナは目を見開いた。

食べる手を止めて、じっとフォルテを見つめる。

そのケイナの眼差しに、今度はフォルテが照れて声をひそめた。

「……いや、だな、その」

後ろ頭をがしがしと掻き、にっこり笑う。

「お前が、嫌じゃなかったら」

「――――フォルテ」

ぽつりと呟くケイナ。「なんだよ?」とフォルテが問うと

「こんの……!!!」

勢いをつけてケイナが立ちあがり、拳を振り上げる。

「うわっ、タンマ!殴るのは勘弁――」

「……バカ……っ」

ぺちり。

握り締められた拳は力を失って、小さく頼りなく、フォルテの肩を叩いた。

「……ケイナ……?」

「……ありがと」

肩をはたいた手を、フォルテは包む込むように握り締める。

小さくか細い手は温かくて。

フォルテは思わず強く握り締めた。

「…………私も、あんたのこと、そう思ってた……から」

「ケイナ……」

俯いていた顔をあげる。

そこにあるのはこれ以上ないほどの笑顔だった。

「私、本当はこれからもずっと、あんたと一緒にいたいと思ってた。だけど、言い出せなくて」

目を閉じ、握り締めるフォルテの手を握り返すケイナ。

「いつも一緒にいてくれたから。これからも一緒にいたいな、なんて」

「ケイナ」

「――これからもよろしくね、フォルテ」

「―――おう」

お互いを見つめあい、思わず笑ってしまう二人。

――と。

「もしもーし、おふたりさーん」

おそるおそると端の方からパッフェルの声が届く。

「お熱いのはおめでたいんですけど……少々……」

冷静になってあたりを見渡せば。

酒場にいた人の視線が全て自分たちに突き刺さっていた。

「困っちゃうかな―……なんて。あは」

「――見てた、の?」

呆けて問うケイナにパッフェルが申し訳なさそうに頷いた。

「はい……あの、大きな音がしたから何事かな―と思って見たら……」

「見たら?」

「……そしたら、お二人とも世界に入られちゃって……」

「え、えと……その」

「仲が良くてうらやましいですねー……」

「――――!!!」

次の瞬間。

ケイナは思いきりフォルテを殴り飛ばした。

「げぱあっ!」

裏拳が見事にヒットし、もんどりうつフォルテ。

「知らない、知らないから。私、帰る!!」

「お、おい、ケイナ〜っ!!」

ずんずんと足早に立ち去るケイナをよろよろと追いかけるフォルテ。

二人の姿を見ながらパッフェルは思わず苦笑して呟く。

「ケンカするほど仲がいい、ですか。なるほど、パートナー、ですものね」

遠くの空の下。

喧嘩する男女の声と軽快なほどの打撃音が心地いいほどに響いていた――。

 

 


 

遅くなってしまい、まことに申し訳ありません!

リクエスト、まことにありがとうございましたっ。

フォルケイ、好きなのに初挑戦のSSですが…

書くの楽しかった…!(爆)

リクエスト、まことにありがとうございました!

 

 

 


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